ケアのポイント
幻視を否定しない!
幻視は否定せず、それがどんなものか十分に話を聞きましょう。 安心できる声かけや対応が、本人の落ち着きにつながります。
- どんなときにどんな場面(環境)でどんなものが見えたのか、幻視の パターンを把握しましょう。そうすることで、ある程度状態を予測し、 対処できる場合があります。
- 幻視は夕方から夜間の薄暗いときに多く、不安により強くなることが あります。影により不安が増大しないよう、部屋や廊下の明るさを調整し、 環境を整えましょう。
- 室内の物を見間違うことがあるため、壁に洋服をかけたり、目の付くとこ ろに洗濯物を干したり、1ヶ所だけに目立つ色の物を置いたりしないよう に工夫をしましょう。
- 幻視には、近づくと消えることがあります。また、「消えてすっきりいなく なりました」と言って手を叩くと消えることがあります。
症状の動揺を把握する!
- しっかりしているときと、まるで別人のようにボッーとしているときがあります。介護者の方は、今どちらの状態にあるのかを十分に把握してお くことが大切です。状態の悪いときはあまり働きかけをせず、見守るよう にしましょう。
- 日常生活では、症状の動揺ができるだけ小さくなるように努めます。具体的には、適度な運動と規則正しい生活が大切です。また、昼間より、疲れてくる夕方から夜中にかけて状態が悪くなりやすいので、安心できる声かけを心がけましょう。
転倒を防止する!
- パーキンソン症状や注意力障害により、ちょっとした物につまずき 転倒しやすくなります。起立性低血圧による転倒のリスクも高いので、立ち上がるときや、入浴後、排便後は特に気をつけましょう。
- 階段の上り下りの際には、手すりを利用し、見守りや声かけを心がけ、転倒防止に努めましょう。
- いきなり後ろから声をかけると、振り向きざまにバランスをくずし、転倒することがあります。本人の正面から声をかけることで、お互いの表情が見え、安心にもつながります。
- 生活している家の中の環境を整えましょう。滑りやすい物やつまずきやす い物がないか確認します。例えば、玄関マットをはずす、コード類を壁際に固定する、厚みのあるカーペットや段差をなくす、などの工夫をします。家具はなるべく凹凸がないように配置しましょう。
- 日頃の生活では、新聞や雑誌、その他のこまごました日用品を床に置かな いように気をつけます。また、台所や洗面所・脱衣所などは、特に水で 濡れたらそのつど拭き取り、滑らないよう注意しましょう。市販の滑り止め用品をうまく取り入れて活用するのもよいでしょう。
- 家屋の手すりの取り付けや、階段・浴室の改修は、介護保険サービスの住宅改修を利用するとよいでしょう。
- 本人の服装に気を配りましょう。ズボンの裾は短めにして引っかからないようにします。外出時は滑り止め靴を履き、両手を使えるようにリュックサックや斜めがけのカバンが安全です。また、足の爪(巻き爪)はきちんと手入れしておきましょう。状態によっては、杖の使用を考えることも必要でしょう。
レム睡眠行動障害時に対応する!
- 睡眠中に大声で怒鳴ったり、怖がったり、暴れたりするときは、電気をつ けて部屋を明るくしたり、懐中電灯を顔に当てたり、目覚まし時計を鳴ら したりして、目が覚めるような働きかけが大切です。悪夢と現実が混同して混乱や興奮が増大する場合があるため、体をゆすって急に起こさないよ うに気を付けましょう。
- 睡眠時の異常行動では、ベッドから転落してケガをしないように、ベッド柵を取り付けるなどの工夫が必要です。ただし、ベッド柵に手足をぶつけ てけがをする患者さんもいますので、そのリスクがあればベッド柵に カバー、クッションなどをつけましょう。
- 昼間に眠ってしまい夜が眠れなくならないよう、日中に活動できる環境を 整えましょう。具体的には、長時間の昼寝を避け、本人の好きな趣味や何か熱中できるものを見つけて生活に取り入れます。他者との交流を図る 機会を作る、あるいはデイ・サービスなどを利用するのもよいでしょう。
身体状態に気を配る!
- 病気が進むと、食べ物を気管内に飲み込み窒息しやすくなります。食事時 の見守りや食べやすい調理の工夫、食事に集中できる環境作りに配慮しま しょう。
- 自律神経症状の1つである便秘を何日も放置すると、腸閉塞(イレウス) を引き起こすことがあります。排便の有無や観察・コントロールが大切です。また、高齢になると、のどの渇きを感じにくくなり、水分不足に陥り がちになります。こまめに水分を補給し、適度な運動や食物繊維の摂取な ど、便秘予防に努めましょう。
- 日頃から身体機能を維持し、低下しないような生活を心がけましょう。 状態のよいときに、歩行訓練や軽い体操を行います。デイ・サービスや 訪問リハビリを利用するのもよいでしょう。一方、状態の悪いときは、見守り、積極的な関わりを控えましょう。
- 薬に対して過敏なため、新しい薬が始まった時や変更された時は、状態の 変化がないか注意します。変化時は、かかりつけ医に相談しましょう。
決してまれな病気ではありませんが、初期にさまざまな精神症状が現れるため、誤診されることがあります。大切なことは、ご家族・介護者様が病気のことをよく理解したうえで、介護の工夫やその人に合った対応をしていくことです。
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