ケアのポイントこのページを印刷する - ケアのポイント

前頭側頭型認知症は、ご本人だけでなく介護者の方にとって、とても負担が大きいものです。
したがって、介護者の方の労をねぎらい、ご本人を尊重し、病気特有の症状の理解に努め対応していくことが大切です。

常同行動を利用する

症状の「常同行動」を利用して、ご本人の得意な作業や行動を生活に取り入れ日課にし、それに沿った時刻表的生活を送ってもらいましょう。

その際、「退屈だから気分転換換に」と温泉や旅行に連れ出さないいようにしましょう。

前頭側頭型認知症の方は、特に急激な変化や刺激に弱いので、それを避けるためワンパターンの生活を送ることが望ましいです。こだわりが強く、周囲に迷惑を及ぼすような行動をくり返す場合は、デイ・サービスなどを利用し、より良い生活がパターン化するように導きます。

それでも、問題行動がひどい場合は、短期入所や入院なども考える必要があります。

影響されやすさを利用する

ご本人の得意な作業や介護者の方がやってもらいたい作業がある場合、症状の「影響されやすさ」を利用します。

作業の道具は見えやすい所に置き、すぐ手に取れる所に準備します。
また、優しい言葉をかけ、自然なかたちで道具を手渡すなどの工夫をしましょう。 その際、言葉による強い指示や無理に誘うことは避けてください。かえって、症状の「立ち去り行動」を誘発することがあるからです。

拒否や抵抗がみられるときは、なじみの歌を歌いかける、別な興味のある活動を促すなど、その場と関係のない刺激を与えてください。注意をそらせることで、活動を継続できる場合があります。

得意な作業を日課にする

ご本人の過去の仕事や趣味から得意なもの(編み物や踊りが上手など)をみつけてください。

たとえばジグソーパズル・七ならべなどののゲーム・カラオケ・絵画などご本人の好むものを選び、それを毎日やってもらいます。
少なくともそれを行っている間は問題行動が減り、保たれている機能の維持にも役立ちます。

環境を整える

周囲の環境に影響されやすいので、騒音・映像・食べ物の匂いなどに注意してください。
また、広すぎる場や強すぎる光などもご本人を刺激しますので、環境を調整してください。
デイ・サービスなどでは静かな刺激の少ない環境で1:1の個別対応が望ましいです。

なじみの関係をつくる

前頭側頭型認知症の方が安心して暮らすにはなじみの関係が大切です。

はじめのうちは記憶力がある程度保たれていますので、デイ・ サービスなどの場所や施設スタッフとなじみの関係を作りやすいです。同じ場所で同じスタッフに対応してもらうとよいでしょう。そうすることで、ご本人の安心を得られ落ち着きへとつながります。

最初は嫌がっていても、しだいになじみの人間関係や環境ができあがれば、喜んで通所するようになる場合もあります。その間、介護者の方が自分の時間を確保し気分転換することも、長い介護生活の中ではとても重要なことです。

背景を知る

周囲に迷惑の及ばない行動はなるべく見守ってください。

ご本人の意に反してさえぎると、興奮し暴力になることもあります。攻撃的言動に振り回されず、不満・不安・怒り・恐怖・過去の悔しかったことなどに固執していることが原因の場合もありますので、何よりもご本人のこれまでの生活状況を知り、対応することが大切です。
まず、話を聞くこと(傾聴)とご本人のありのままを認めること(受容)が基本となります。

逆に介護者の方が感情的になられると、「影響されやすさ」があるため、更にご本人が興奮するといった悪循環におちいります。
暴力になっても、あっけらかんとしているのが特徴なので、介護者の方もそれを念頭にいれて、しばらく距離を置くなどの工夫をしましょう。

食行動異常に対処する

食行動異常では、大食いや甘いもの・味の濃いものを好んで食べるようになりますので、肥満や糖尿病といった身体的合併症を引き起こさないよう注意が必要です。
しかし、厳しく注意するのではなく、目のつくところに食べ物を置かない・食べ物から注意をそらす、などの工夫をしましょう。
十分に咀嚼せず嚥下することもあるため、むせや窒息などを予防し、見守りやゆったりとした食事の雰囲気作りなどを心がけましょう。


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